桝田くんは痛みを知らない
「そうだね。痛くはない」

「昔、本気でやったとき。泣かれたからな」


 手加減してもらえてよかった。


「手相占いくらいで妬くとか」

「わ、悪い……?」

「かわいすぎか」


 …………!!


「俺、これから挨拶で女と握手もできねーの?」


 ニヤッと口角をあげて、見上げられる。


「そ、そんなこと言ってない」

「いちいち断ってやろうか? カノジョがヤキモチ焼きなんで。半径2メートル以内には近づかないでくださいって」

「イジワル……!」


 っていうか。

 …………“カノジョ”って言った。


「この先、なりゆきとか。それこそ不可抗力で女に触れることもあるだろうけど。俺が触れたいと思うのは、古都だけだから。他の女に特別な気持ちなんて1%も抱く気、ねーから。なんも心配すんな」


 言い切ってくれるのが、嬉しい。
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