桝田くんは痛みを知らない
「課題やってたんだ?」

「うん」

「今どんなことやってるの」

「えっと……」

「ああ。そのあたりか」


 そういってテキストを覗き込んでくるマサオミくんの顔が近くにきて、ドキリとする。

 い、意識するんじゃない。和泉古都。


「懐かしいな」


 こんなにも近くにマサオミくんがいて、ドキドキする。

 ……だけど。


「僕が習った頃から。もう2年もたつんだな」


 桝田くんのくれるドキドキと、それがベツモノだということに気づいた。


 やっぱりわたしは、マサオミくんが好きだ。

 その気持ちはなくならない。

 ましてや捨てたり、忘れたりしない。


 ――――“すき”の形が、変わったんだ。


「ちょうど開いてるし。英語からする?」

「うん」
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