桝田くんは痛みを知らない
 奥のベッドから、声が聞こえてきた。

 え、待って。


 デスクの上の来室記録表、空白だったよね。

 今日は誰も出入りなしって思ってたのに。

 ひとがいたの……!?


 ――――シャッ


 カーテンが、開き。

 顔を覗かせたのは――……


「誰かと思えば。オマエか」

「……ゲ」


 ――――桝田義久。


「なんでアナタがいるの」

「こっちの台詞だ。耳障りな声で睡眠妨害すんな」

「は? わたしは、真面目に掃除してるんだけど」

「般若心経唱えながら?」

「そんなことしてないし……!」

「じゃあ独り言が趣味なのか。暗えやつ」


 なっ……


「静かにしてろ。つーか。もう出てっていいぞ」

「なんでそんなこと言われなきゃならないの」

「快適に眠りてーから」
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