桝田くんは痛みを知らない
「遊園地のチケットー!? 行く行く!」


 翌日

 えみるを誘ったら、秒でオッケーの返事をもらえた。


「さすが宗田先輩。喉から手が出るほど欲しいものを、さらっとくれちゃうんだもんなあ」

「五十嵐先輩、部活とかないかな」

「あー、ありそう。でも午前中だけとかじゃないかな。お昼から参加できるよ」

「じゃあ、えみるに合わせてマサオミくんとわたしも――」

「待って。行くの宗田先輩なの?」


 …………?


「てっきり桝田くんかと」

「えっ!?」

「だってこれ。ダブルデートじゃん」


 ダブルデート……?


「まあ、チケットくれたの先輩だし。古都と先輩は、昔からの付き合いがあるし。なにも不自然ではないけど……」

「けど?」

「ううん、なんでもない。桝田くんが知ったら怒るかもね〜」

「……そう思う?」

「嫉妬されて。独占欲、発揮されて。解放してもらえなくなったりして」

「なにそれ」

「しーらない」


 そう言って笑うえみるの背中に、黒い羽が見えた。
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