桝田くんは痛みを知らない
#10 ドキドキすること
#10



「行ってこれば?」


 昼休み。

 非常階段で待ち合わせした桝田くんは、わたしに二つ返事でそう言った。


「いいの?」

「4人なんだろ」

「4人だけど」

「行きたいんだろ?」

「…………うん」

「それを止める権限。俺にはねえよ」


 その言い方だと。

 あんまり賛成してくれてるってワケでもないような。


「桝田くんも……、行く?」


 チケットは当日買い足しても大丈夫なわけだし。


「行くわけねーだろ」

「そうだ。ヤザワくんも誘って」

「うわ〜。余計に行きたくねえ」

「そう?」

「……夏の遊園地なんてシビアだからな」

「!」

「いくら連れてってやりたくても。俺には厳しい」


 そういう桝田くんが、寂しげで。


 ああ。

 わたし、自分のことしか考えてなかったって。


 胸が、苦しくなった。
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