桝田くんは痛みを知らない
「えっ、」


 桝田くんが、顔をわたしの首元に近づいてきて――


「……なに、してるの?」

「キス」

「でも」


 なんで、そんなところに?


「こんくらいで驚いてたら。もたねーよ?」


 他に、なにをする気なの……!?


「コトリの香りがする」

「やだっ、桝田くん。嗅いじゃダメ。……今日、体育あったし」

「そう言われると嗅ぎたくなる」

「ヒドいよ……!」

「酷くない。古都の香りなら、どんなのでも。どこのでも嗅ぎたいだけ」


 ――――!?


「舐めていい?」

「いいわけないよ!」

「そういうと思った」


 冗談がすぎるよ。

「……って、え……あっ……桝田、くん……?」

「ゴチャゴチャうるせーな。静かにしてろ」

「……っ」


 首の、下から上にかけて。

 ツーッと舌を這わされると。


 くすぐったくて。

 ゾクリ、として。


 どうにかなりそうになる。


「やめて、桝田くん」

「声出すなら。もっと色気ある声だせば」
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