桝田くんは痛みを知らない
「それって……。どんな、声?」


 峰不二子みたいに、セクシーな?

 おとなのお姉さんみたいな、声?


「出し方、わかんない」

「まあ。要は、俺が、出したくなるようなことすればいーんだろ」


 そういうと、桝田くんが、耳に髪をかけてくる。


「1つもあけてねーんだな」

「……ピアスホール?」

「ああ」

「お母さんが。許してくれないよ」

「あけてやりたい」

「え?」

「古都に、穴」


 ――――!


 えっ えっ


「痛い?」


 そういって、桝田くんが耳を噛んでくる。


「痛くは、ないけど」

「けど?」


 痛みを与えようとして噛んでいるわけでは、ないのだろう。


「くすぐったい……よ?」

「それだけ?」

「え……」

「他には? なにか。感じないわけ」


 そんなこと言われても。

 そんなこと、言われてもぉ……!


「ダメっていってるでしょ!?」

「言っておくけど。煽ったのはオマエだから」

「わた、し?」
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