桝田くんは痛みを知らない
 呆れ笑いした桝田くんが、


「そーいうこと」


 わたしから身を離す。

 どうやら、続けるのはやめたようだ。


 ホッとしたと同時に、なんだか少し名残惜しく感じて、余計に恥ずかしくなる。


「土曜。俺んち来れば」

「……桝田くん、の。おうち?」

「もっとドキドキすることしてやるから」

「こ、これ以上、ドキドキしたら。…………溶ける」

「じゃあ。溶ければ」

「ヒドい」


「嘘だよ」って言って、

 わたしを抱き寄せ、ギュッと抱きしめる桝田くんから。

 温もりと、力強さと、愛が伝わってくる。


「消えられてたまるか」

「うん」

「いなくなんなよ、絶対。俺の傍から」

「うん」

「なら。遊園地、行ってよし」

「お土産買ってくるね」

「いらんわボケ。それ見るたびに俺に嫉妬させたいのかよ」

「えー、ちがうよ。クッキーとか。可愛いのあるでしょ?」

「イラネ」

「じゃあ。わたしとお揃いの、キーホルダーは?」

「…………ちょっと欲しいな。それは」
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