桝田くんは痛みを知らない
「カッコイイ子ね」と、耳打ちされる。

 好感触だ。


 それも、桝田くんが慣れない敬語を使っていること。

 それから――


「古都さんをうちに招待しようと思うのですが。許可をいただきたいなと、思いまして」


 ピアスが全部、外されていること。

 更には髪もきちんとセットされていることが、大きいだろう。


「桝田くんの家に?」

「うちの住所は、ここなんですけど」


 そういってメモをお母さんに渡す、桝田くん。


「うちの車で向かおうかと。車にはノブナガを乗せることもできます。帰りは、門限までにお送りさせてもらいます」

「古都」

「はいっ」


 お母さんに呼ばれて近づく。


「お金あげるから。途中でお菓子でも買って。きちんとお渡ししなさい」

「え?」

「挨拶しっかりして。お行儀悪いことしないでよ?」

「行っていいの?」

「帰ったら、聞かせてもらうからね。こんないい男。どうやって捕まえたのよ」
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