桝田くんは痛みを知らない
 桝田くんはお母さんに、かなり気に入られたらしい。


「余裕だったな」


 車に乗り込んでからの桝田くんは、いつもの桝田くんだった。


 水族館でも映画でもどこでも。

 気をつけてね、だってさ。

 遅くなるなら電話すれば多少の門限の延長は可能っぽい。


 あっけなさすぎて、ビビる。


 やっぱり顔なの?

 それとも、お金のニオイ?


 はたまた、その両方……なのか?


「ノブナガ。留守番になったな」


 お母さんが、桝田くんの家をノブナガが汚すんじゃないかと心配して、引き止めた。


「あ。お土産買ってから行きたいんだけど」

「なくていーよ」

「でも」

「どうせ家の人間は俺しか帰らないから。無駄になる」
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