桝田くんは痛みを知らない
「アレ着てこなかったの?」

「……どれだよ」


 そっけなく答えると、わたしに近づいてくる。


「俺の部屋行こうか」

「え?」

「ここだと。うるせえのいるから」


 桝田くんが眉間にシワを寄せてノアさんを見ると、


「ボクのことは透明ニンゲンだと思って。どうぞどうぞ。始めちゃっていいよ?」


 なにを!?


「……夕飯出前でもとるから。帰れば」

「いやいや。ヨシヒサがガールフレンド連れて来たんだ。腕をふるうよ」


 ノアさんに見送られてリビングを出ると、階段をあがり、長い廊下の突き当りの部屋の扉を桝田くんが開けた。
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