桝田くんは痛みを知らない
「そんなことないもん。周りのみんなだって借りて見ることあると思うよ?」

「画面ワンタッチで買えたりレンタルできる時代に。店まで出向く意味がわかんねえな」


 一見、お金持ちの皮肉のようにも聞こえるが。


 桝田くんにとっては、それさえも、生活の工夫なのだなと思えてならない。


「なに見ようかな〜」


 座ってタブレットを操作しているわたしの隣で、足を伸ばして寝転んでいる桝田くん。


「ホラー見ようぜ」

「やだ!」

「さては。こえーの苦手か」

「えっと。グロいのが、苦手」

「頭や腕が吹っ飛ぶの見るか」

「絶対やめて〜!!」

「なにがこえーの? 作りモンのカラダが切れたりグチャグチャになるだけだろ。あとはCGとか」

「想像、しちゃうから。同じことが自分に起きたら怖いだろうなーって……」
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