桝田くんは痛みを知らない
 飛び跳ねるような痛みは、なくても。


「……心は。痛む、よね」


 痛みにも、いろんな、痛みがある。


「心の痛みには。誰よりも敏感なんだろうって。気がしてる。……もちろん、勝手な憶測、なんだけど。なにも知らないわたしが言うの。ヘンかもだけど」

「そうだな」

「!」

「たとえば、ピストルで頭を吹き飛ばされることは。怖くはないし」


 やっぱり、桝田くんの、感覚は。

 わたしの感覚とは、ちがう。


「じわじわ拷問受けたとしても。相手を楽しませるような反応、俺は見せてやらない。皮剥がれても指を1本ずつ切られても。冷静に出血量見て、あとどのくらい“もつ”だろうとか、考えてしまうんだろうな。あとは。ただいたぶられるの、ムカつくから。『こんなことしかできねーの?』って笑ってやって。逆に怖がらせてやるとか」
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