桝田くんは痛みを知らない
 ――――見せて。


「たとえばオマエが俺から離れてく未来を、ほんの少しでも想像してみたり。オマエを悲しませることにでもなれば。……俺の胸は。すげぇ痛えよ」


 “消えられてたまるか”

 “いなくなんなよ、絶対。俺の傍から”


 桝田くんに、近づいて。

 顔から、手をどけて。


 桝田くんの顔を覗き込もうとしたら――


「古都は。俺に、こんなにも痛みを教えてくれた」


 腰に手をまわし、抱き寄せられた。
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