桝田くんは痛みを知らない
 桝田くんの抱えている、不安を。

 わたしが理解しきれるとも、ましてや、完全に消せるとも思わない。


 それでも、1秒でも長く、取り除いてあげたいと思うよ。


 桝田くんの背中に手をまわし、抱きしめると。

 痛いくらいに、桝田くんは、わたしをギュッと包み込んでくれた。


「痛えか?」

「……ううん」

「ほんとは。ちょっと痛いだろ」

「ちょっとだけ、ね」


 だけど、この痛さは、心地良い。


 なんて口に出したら呆れられちゃうかな。
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