桝田くんは痛みを知らない
 わたしがあげたのって。

 まさか。


「今でも包み紙、引き出しに入ってるって言ったら。どうする?」

「入ってるの……!?」

「さて。どうでしょう」


 あのこと、覚えてくれていたことだけでも驚きなのに。


 残ってるわけ。

 …………ないよね?


「正解は?」

「ナイショ」

「ええっ!?」

「また今度、僕の部屋に遊びに来たときにでも。探してみたら」


 そんなこと言ったら本気で探すよ。


「って、待って。このアイスはマサオミくんが買ってくれたモノだから。プレゼントにならないよ?」

「もう今は古都ちゃんのだよ」

「お金のことなら大丈夫だから。ちゃんと、『マサオミくん貯金』してるし!」

「はは。なにそれ」

「毎年、マサオミくんの誕生日に金欠でも対応できるように。毎月積み立ててるの」

「へえ。そんなことしてたんだ。知らなかった」


 こんな話が普通にできるようになったのは、わたしが、マサオミくんのことを前ほど意識していないということだろう。
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