桝田くんは痛みを知らない
 わたしの手に、マサオミくんの手が、重ねられる。


「ドキドキしてないなんて。言わせないよ」


 大好きな声が、耳元から聞こえてくる。


「桝田と。キスした?」

「……え」

「したんだ」

「っ、」

「初めてだから。ドキドキしたろ」


 初めてだから……?


「悔しい。僕がずっと欲しくてたまらなかったもの。あっさり、横取りされて」

「マサオミくん……」

「僕だって古都ちゃんとキスしたいのに」


 マサオミくんが、そんなこと考えていたなんて思いもしなかった。

 だってマサオミくんは、完璧なお兄さんで。

 追いかけても、追いつかなくて。


 となりには、可愛い彼女がいたし。

 優しくしてくれたのは、みんなに優しいから。

 近くに住んでいるから。

 だから、仲良くできた。


 でも、そうじゃなかったの……?
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