桝田くんは痛みを知らない
 マサオミくんの声に元気がないとわかったとき、マサオミくんから力が抜けていき。


 マサオミくんの腕の中から解放された。


「ちゃんと。好きだったよ」


 マサオミくんは、もう、わたしの目を見ていない。


 ズキン、と。

 胸の奥が痛くなる。


 傷つけているのは、わたしの方なのに。


「過去形にされるのは。嫌だな」

「……ごめんなさい」

「君にそうやって。辛そうに謝られるのも嫌だ」


 どうしていいか、わからない。

 謝罪の言葉しかでてこない。


 息が、つまる。

 このゴンドラに乗り始めてまだ10分もたっていないはずなのに、とても長く感じる。


 なにを言っても、マサオミくんを苦しめてしまう気がした。

 それでも伝えたい想いが、ある。


「これからも。……先輩後輩として。ご近所さんとして。仲良く。できない、かな」
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