桝田くんは痛みを知らない
「いらっしゃい」


 観覧車から、降りたあと。


 なにもなかったかのように過ごすマサオミくんに合わせて、わたしも、平然を装った。


 嘘をつくのはうまくないけれど、人間、どうしようもなく追い詰められたら、取り繕うことに抵抗がなくなるのだなと思い知らされた。


 マサオミくんに告白されたことをえみるに隠し、楽しむフリをした。

 けれど、本当は、怖くて仕方なった。

 マサオミくんの、こと。


 そして――


「久しぶりだね。古都ちゃんが僕の部屋に来るの」


 わたしは、マサオミくんに部屋に呼ばれた。
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