桝田くんは痛みを知らない
 背筋に寒気が走り、振り返ると、ベッドに腰をおろし脚を開いて座るマサオミくんが笑っていた。


「桝田に言っておいてくれるかな。これから、まだまだ暑くなってくるから。この夏は。十分、“気をつけて”生活しろって」

「……なに、するの」

「別になにも」

「嘘」

「ただ、僕は。古都ちゃんが、欲しいだけ」

「……おど、してる?」

「どう捉えるかは、任せるけど。あんまり僕は、気が長いほうじゃないんだ。他のことなら、我慢できても。君のことになると。自制がきかなくなるらしい」

「傷つけないで。ヨシヒサくんの、こと」

「この期に及んで自分でなくアイツの心配するのか」

「傷つけたくないの。これ以上」

「これ以上?」

「ずっと、苦しんできたの。ヨシヒサくんは」 
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