桝田くんは痛みを知らない
 重い足をゆっくりあげて

 マサオミくんの元に、近づいていく。


「そんなに怯えないでよ」


 自分の手が、足が、小刻みに震えているのが、わかる。


「ねえ、古都ちゃん」


 グイッと腕を引かれ


「古都ちゃんの初めて、ちょうだい?」


 ベッドに、押し倒される。


「……わたしの。初めて?」

「アイツと。どこまでしたの」


 そう問いかけられて、マサオミくんが、わたしと恋人同士ですることがしたいのだと気づき。


 サァっと血の気が引いていく。


「最後までしたとか、言わないよね?」

 
 声は優しいけれど、目は笑っていない。

 奇妙なくらい穏やかに怒っている。


「……してない、と。思う」

「思う?」

「最後が、どこか。わからない。想像できない」
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