桝田くんは痛みを知らない
「ああ。そういうことか。本当にかわいいね、古都ちゃんは」


 マサオミくんに、かわいいって言われてるのに。


「なんにも知らないんだね」


 うれしく、ない。


 あんなに好きだったのに。

 なによりも欲しかったのに。


 ずっと、ずっと、変わらないと思っていたのに。


「……ヨシヒサくん」


 ヨシヒサくんに、会いたい。


「その名前を呼ぶな」

「ヨシヒサくんを傷つけないって、約束して」

「そのためなら。僕になにされてもいいの?」

「…………約束、してくれるなら」


 ヨシヒサくん、ごめん。

 あなたとの幸せ、叶えられそうにない。


 でも。

 わたし、望んでるから。


 ずっと、望んでるから。


 どうか、幸せになって。


「健気だね。ほんと、妬けるよ。憎いよ。アイツが」


 マサオミくんの顔が、近づいてくる。

 恐怖で、まぶたをとじ、シーツをギュッと握ったとき。


 ――――窓の外から、声がした。
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