桝田くんは痛みを知らない
#16 手紙
#16


 マサオミくんの家の玄関の扉を開くと、


「この非行少女」


 ヨシヒサくんが、いた。

 ノブナガの首に繋がったリードを持っている。


「こんな時間に男の家に上がりこみやがって」

「ごめん」

「それも。こんないい男と付き合っておきながら」

「ごめん」

「まさか。お楽しみ中だったなんて。言わねえよな?」

「ごめん」

「……楽しんでたのかよ」

「ヨシヒサくんっ」


 なにも、考えられなかった。


 ただ、ヨシヒサくんの胸に飛び込むことしかできなくて。


「おいおい。こんな公衆の面前で。……しかもオマエの家の近くで」

「ヨシヒサくん」

「はいはい」

「会いたかった」

「バーカ。昨日会ったとこだろ」


 そういって、ヨシヒサくんが、わたしを抱きしめ返してくれたとき。

 身体の震えが、止まるのがわかった。


「行こうか」

「どこ、に?」

「ノブナガの散歩」
 

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