桝田くんは痛みを知らない
 ――――手紙には


 昔、えみるとヨシヒサくんの2人が、病院で知り合ったということが書かれていた。


「ヨシヒサくんは、えみるのこと忘れてたの?」


 河川敷の階段に腰をおろし。

 街灯の薄明かりのしたで、

 続きを読むために便箋を1枚めくった。


「未だに思い出せない。あの頃の俺は、他人と特別仲良くなる気もなかったけど、壁を作ってもいなかった。だから、同年代のやつと話すことなんて、珍しくもなかったんだ」


 そう言って、ヨシヒサくんがノブナガを撫でた。


「そうなんだ」

「松嶋は、高校で再会した俺が別人みたいになってるのを見て。近づいてきた」


 手紙の続きには、こう書いてあった。

 紹介したい友達が、いると。


 その子といると。

 くよくよ悩んでいるのがどうでもよくなるくらい、救われてきた。


 ヨシヒサくんも絶対に仲良くなれるって。


 そう書いてあった。


 その、女の子が――


「松嶋は。俺を、オマエに紹介したかったんだ」
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