桝田くんは痛みを知らない
「生まれつきの茶色い髪をバカにされた。ろくに遊べなかった子供時代の反動で外見が派手になっていった。そんな松嶋に、遊んでるとか性格が悪いとか、女子は影口をたたいてきたらしい」


 ――――そんな話、知らない


「わたし、中3のとき、えみると知り合ったの。体育の時間。たまたまペアが見つからないもの同士で組んで。それから一緒にお弁当食べるようになって」


『和泉さん、下の名前“古都”っていうんだ。珍しいね』
『いっしょに帰ろ!』
『え、古都も小田高受けるの?』
『そっか。幼なじみがいるんだ。宗田って……ああ! 1年のとき生徒会長してた眼鏡のイケメン!?』
『ふーん。初恋の彼と同じ高校目指すとか健気だね』
『いっしょに合格できるといいね〜』


 同じ志望校で。

 可愛くて、明るくて。

 オシャレでいて、頭のいいえみるのこと。


 大好きになって。

 尊敬もしていて。


「当時、彼氏と別れたあと。近づいてくる男子は下心が見え見えでウンザリしてたらしい。松嶋は、敵だらけの学校生活で。古都の無垢さに救われた」
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