桝田くんは痛みを知らない
 わたし、桝田くんのこと誤解してた。


「あのね。もし、よかったら。これからも話、聞いてくれないかな」

「断る」

「お願い。ちゃんと女を磨くから……!」


 眉間にシワを寄せて睨まれる。

 わたし、そんなに信用ない?


「それで、女子力あがったら。そのときは。キスしたくなる雰囲気の作り方、教えてよ」

「キモ」

「……っ」

「オマエみたいなのに好かれたマサオミってやつが。気の毒だな」


 やっぱりイヤなひとかもしれない。

 そしてマサオミくんの名前、ちゃっかり覚えちゃってるし。


「つーか。はやく教室戻れよ」

「アッ!? もうこんな時間……!」


 授業開始、1分前。


「やっば……」
「チリトリと後片付け。しててやるから」


 …………え?


「い、いいの?」

「走るのカメより遅そうだからな」

「失礼な。カメよりははやいよ!……ウサギよりは遅いかもだけど」

「遅いんかい」


 へんなの。


「あと、よろしくね」

「はいよ」

「……ありがとう!」

「はよ行け」


 次の授業は、サボるのに。

 掃除はやっておいてくれるとか。
< 27 / 300 >

この作品をシェア

pagetop