桝田くんは痛みを知らない
 たしか占いの館は、ここより更に客入りが見込めない場所に配置されていたはず。

 場所は実行委員のくじ運次第なのだが、そんなの関係ナシに繁盛させてしまうのだからたいしたものだ。


「桝田くん、離してもらえないみたいだね。あの列が途切れるまでは。まったく途切れる気配感じなかったよ」

「大丈夫かな」


 体力的にも精神的にも。


「矢沢が、桝田くんが逃げたくならないように飲み物とかアイスの差し入れするって得意げに言ってから。暑さ対策は大丈夫っぽいけど」


 部屋には、ちゃんとエアコンがかかっているよね。


「せっかくだから、あたしも先輩とのこと占ってもらいたかったんだけど。あれに並ぶのは……他になにも見て回れなくなりそうだからパスした」

「当たるのかな」

「なんかねー、行った子の話によると。辛辣なコメントに胸キュンするらしいよ」


 それ、どんな占い……?


「なんといっても、あの氷の王子と話せるってだけで。うちの女子からしたら貴重だからね。何回も並んでる子、いるんじゃないかな」


 やっぱりヨシヒサくんは、占い師でなくアイドル扱いされているようだ。
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