桝田くんは痛みを知らない
 そういうこともあり、

“桝田義久にカノジョができた”

 という噂は全学年に広がった。


 きっと、わたし達に関する話は、マサオミくんの耳にも届いただろう。


「おーっと、噂のカノジョ! ステージにどうぞ」


 ――――!


「行っておいでよ」

「イケメン彼氏との告白バナシ聞かせて〜」


 はやしたてられ――ううん、周りはノロケ話の一つで言いなよというノリで悪気はないのだろう。


 だけど、これはさすがに、キツい。


 ヨシヒサくんとのことを、マサオミくんの前で話すことなんて、できない。


「わたしは、いいです……」

「そんなこと言わずに、あがってあがって」


 舞台へ続く階段を、背中を押されてのぼる。
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