桝田くんは痛みを知らない
「どうして、出られないの?」

「なあ。これ、どういう意味」


 …………はぐらかされた?


「どれ?」


 立ち上がり、桝田くんの隣に座る。


「これ」


 そういって画面を差す桝田くんの指が、しなやかで、細く長くて。

 わたしもこんな手になりたいと思うくらい、綺麗だった。


「えーっと。ああ。本人映像っていうのは、ミュージックビデオが液晶画面に流れるの。そうじゃないやつは関係ない映像が流れる」

「じゃあ。採点ってのは?」

「そのままだよ。機械が歌った人の評価をつける。得意なとこや不得意なとこを分析してくれたり」

「なんか歌えよ」

「え?」

「得意なやつで高得点出なかったら。そうだな。罰ゲームでも受けてもらうか」


 …………罰ゲーム?
< 39 / 300 >

この作品をシェア

pagetop