桝田くんは痛みを知らない
#05 カベとミゾ
#05



 A組のうしろの扉から教室を覗いたら、チャイムの鳴る寸前だったのに、中に桝田くんの姿はなかった。


 昼休み。

 食堂に向かう前に、もう一度。

 今度は、えみるとA組に足を運んでみたけれど――


「いないね。ひょっとして、休みなのかな〜」

「……そうかも」


 桝田くんの姿を確認することが、できなかった。


 食堂に着くと、やっぱり混んでいて。

 生徒の多くは上級生なのも変わりない。


「困ってる?」


 声をかけてくれたのは、


「ここ。どうぞ」


 この前マサオミくんと一緒にご飯を食べていた、爽やかな先輩だった。

 短い黒髪がきちんと切り揃えられていて、背筋がピンと伸びている好青年。

 勝手なイメージだけど和服が似合いそう。


 もしかしてマサオミくんもいるのかな、と辺りを見渡したけど見当たらない。


「どうもー!」


 テンション高めに挨拶する、えみる。


「今日も元気だね」


 はにかむ先輩。
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