桝田くんは痛みを知らない
 ぎこちないなあ、わたし。

 昔は、こんなに意識しなかったのに。


 いつしかマサオミくんが、わたしの中で、特別だってことに気づいた。


 それが“恋”だと知ったのは、3年前。


 マサオミくんにカノジョができたと知ってショックを受けたときだ。


 たぶん、ずっと、好きだった。


 ランチを乗せたトレイを持って席につくと、えみるが肘で軽くついてくる。


「高校生活には慣れてきた?」

「はい、少しずつ」


 ドキドキしながら返事していると、


「いきなりテスト期間突入とかイヤになります〜。そうだ、勉強教えてくださいよ。古都とあたしに」


 えみるが突然そんなことを言い出したものだから、驚きを隠せない。


「最初のテストは、そんなに難しくもないよ」

「それ、会長だからじゃないです〜?」


 疑いの目を向ける、えみる。

 そんなえみるを見てマサオミくんの隣で、黒髪短髪の先輩が「たしかにな」と爽やかに笑った。
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