桝田くんは痛みを知らない
 男子が、桝田くんの耳からイヤホンを引き抜く。


「ヤバそうだね。先生呼んで来たほうがいいかな」


 と、えみるが囁いたとき。


「バカバカしいのはどっちだよ」


 そう言って、桝田くんが顔をあげた。


「なんだと?」

「こんな場所。ただの大学への通過点だろ。学園祭ごときに、いちいち熱くなりやがって。小学生かよ」

「……っ、テメェ!」


 茶髪の男子が桝田くんに掴みかかる。


 女の子たちが、キャア、と声をあげる。


「もっとも。俺は小学生の頃にだって、そんなバカみたいに騒いだことねえし。親がどうとかっていうのは。僻みにしか聞こねーんだけど?」


 男子が今にも殴りかかりそうなのに、桝田くんは、動じていないどころか――


「ああ。もしかしてオマエの家、貧乏なの?」


 そういって、嘲笑ったんだ。
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