桝田くんは痛みを知らない
「……謝りなよ、矢沢」


 クラスの女の子からヤザワと呼ばれた男子が、罰が悪そうにわたしに近づいてくる。


「わりい」


 怒りは静まったようだ。

 よかった。


「立てるか?」

「あ……うん」

「掴めよ」


 と、手を差し出された、そのとき。


「どけ」


 桝田くんが、ヤザワくんを、蹴り飛ばした。


 その様子には、さすがに女の子たちも驚きを隠せない。


「病院行ってこい」

「え?」

「頭ぶつけたんだ。念の為、みてもらった方がいい」

「……でも」

「でももクソもねえよ」


 そう言って、桝田くんがわたしを立ち上がらせると


「それ以上バカになったらどーすんの」


 わたしの手首を掴む。
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