桝田くんは痛みを知らない
 教室から出ると、


「……っと。すまん。力、入れすぎたか」


 わたしを掴む力を少し緩めたあと、歩き出した。


「どこ、行くの」

「病院」

「ええっ!? でも」

「ほら、鞄。とってこい」


 わたしのクラスの前で、立ち止まる。


「……ほんとに。大丈夫、だから」

「取り返しつかないことになる前に。行っとけ」

「…………」

「俺のいうことが聞けねーのかよ」

「い、く」

「だったらはやく鞄、とってこい」


 それから、保健室に向かい事情を説明すると、先生が車を呼んでくれた。
< 79 / 300 >

この作品をシェア

pagetop