桝田くんは痛みを知らない
「俺が、桝田に? バカ言うなよ。悪いのはアイツだろ」


 ヤザワくんは、まだ、桝田くんに怒っているようだ。


「桝田くんがなにしたっていうの」

「……なにしたっていうよりは。なんもしねぇから腹が立つんだろ」

「放っておけばいいじゃん。突っかからずに」

「そうはいくかよ」


 下足場で外靴から上靴に履き替えたあと、3人で教室に向かう。



 ヤザワくんは、学園祭の実行委員をしているそうだ。


「最初から、いけ好かないヤツだった。授業中に寝ていても、音楽を聞いていても、注意されなかったり。

体育の授業が始まる前にふらりと消えて、終わったあと、1人だけ涼しそうな顔をして戻ってきたり。

校則違反のピアスをあんなにつけていても、誰にも怒られることがなかったり。

女子ウケは抜群でもよ。男子の中にはアイツのこと、気に食わないって思ってるヤツも少なくないからな」

「イケメンだから僻んでるんでしょ」

「そんなんじゃねーよ。聞けば親が権力者っていうじゃねえか」
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