桝田くんは痛みを知らない
 桝田くんの家のことは、知らないし。

 たしかに素行の悪さも見受けられる。


 それでも、

 体育に“出られない”のには、理由がある。


 それはきっと。

 桝田くん本人の頑張りが足りないとか、そういうモノではないはず。


「桝田くんは調子乗ってもいいの。イケメンだから」

「これだから女子は」

「ちゃんと謝ること。わかった?」

「……そりゃあ掴みかかって、押し倒したけどよ。俺が傷つけたのは――」


 ヤザワくんがわたしを見てくる。


「和泉古都、です」

「イズミさんであって、桝田じゃないだろ。なのになんで桝田に謝らなきゃいけねーの? アイツは俺を侮辱して。蹴り飛ばした。正直めちゃくちゃ痛かったぞあれ」

「自業自得だっつーの」

「はあ?」

「古都は、桝田くんの大切な子だから」


 …………!!


「だから。あんなに怒ったんだよ」
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