桝田くんは痛みを知らない
 わたしが、桝田くんの

 …………大切な子。


「もしや。イズミさんって桝田のオンナ?」


 矢沢くんが、引きつった表情でわたしを見る。


「ちがうよ……!? ちょっとした知り合いというか」

「だよな。イズミさんみたいな大人しそうな子が、アイツと付き合うとかないよな」


 わたし、大人しくもないけどな?


「なにいってんのよー。仲良しじゃん。ね?」

「えっ……」


 正直なところ、お互いのこと、ほとんど知らないし。

 連絡先だって交換していないし。

 他の子より話す機会があっても、喧嘩みたいな言い合いも多いし。

 自信もって友達って言えるほどの仲では、ないよ。


「カラオケ行ってたもんね〜?」


 どうしてそれをここでバラすの!?


「マジ? イズミさん。見かけによらず……」


 見かけによらず、なに!?


「まあ。感情的になってたよな、桝田。オンナのために。あんな顔するヤツなんだな」
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