芦名くんの隠しごと



*



「──では、近くの人と二人組になって、和歌の読み合いをしましょう」


1時間目の古典の時間。


優しい笑顔で悪魔のようなことを告げた、穏やかな女の先生。


“二人組”
ぼっちにとっては最悪のイベント。


しかも、今回の席替えでは、周りに同じぼっち組の人はいなかった。


周りの女の子たちは、みんなペアを組んでいる。


………最悪だ。というか、どうしよう。


こんな私とペアを組んでくれる人なんていなくて。


頼みの綱の芦名くんは、近くの席じゃない上に、もう他の人と組んだみたいだ。


「──水上、」


焦っていたところに、声をかけられて。


振り向くとそこには、クラスメイトである花瀬(はなせ)伊織(いおり)くんがいた。


涼しげな目元が特徴的な、塩顔イケメン。


芦名くんほどではないけど、女の子に密かに人気があるけど、彼は女嫌いという噂がある。


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