芦名くんの隠しごと
「かわいいんだね、水上さん」
「芦名くん、私のことからかってるでしょ」
“かわいい”なんて、言われたことないもん。
芦名くん、そんなこと言えばごまかせるなんて思ってるのかな。
「からかってないよ、本当のこと」
冗談、じゃないんだね。なら余計にずるい。
「……物好きだね」
どう反応したらいいのかわからなくて、そんなひねくれたことしか言えなかった。
素直に「ありがとう」って言えばよかったのに、どうしても簡単には信じられなくて。
「そんなことないよ。それに、それって俺に失礼じゃない?」
そんな風に返されてしまい、顔が熱くなる。
あまりにもサラッと言われるものだから、本心なのかもと勘違いしてしまいそうで怖い。
“本当のこと”とは言われたけど、やっぱりどう考えてもおかしくて。
私がかわいいなんて、ありえないし。
考えた結果、やっぱりお世辞だと思った。