芦名くんの隠しごと



私がそう言うと、芦名くんは少しだけ顔を歪めた。


「……野乃のこと、なんとも思わなかったら、こんなことしないと思う」


「でも、芦名くんは、自分の気持ちがわからないんでしょ?………そんなの、確証ないかもしれないもん」


「───水上、」


あまりにも悲しそうなその声にハッとして振り向くと、花瀬くんは泣きそうな顔をしていた。


「……そのことは、言わないでくれ」


「え……?」


「何も知らないお前が、……いや、知ってたらカンタンに口に出さないと思うけど。とにかくそのことには、触れるな」


……なんで花瀬くんが、そんな懇願するような顔になるの……?


なんでそんなに、切なげな顔をしてるの?


< 118 / 279 >

この作品をシェア

pagetop