芦名くんの隠しごと



「水上さんは、自分のかわいさに気づいてないんだね。ダメじゃん、自覚しなきゃ」


「ダメって…」


それに自覚って。


自分がかわいくない自覚なら充分してるけど、きっとそういうこと言ったら、また芦名くんは恥ずかしいことを言ってくるのだろう。


悟った私だけど、どうにか反抗心を表したくて、軽くふくれて芦名くんを見つめる。


「…あー、ごめんね水上さん。これから巻き込むの確定しちゃった。でも、ちゃんと守るから安心して」


「ま、巻き込むって、なにに……?」


それ、さっきから言ってるけど、全く話が見えないのですが。


「細かい話はあとで。まず、ここから脱出しないと。正門には追手が見張ってるから、ここからになっちゃうけど、それもごめんね」


「う…うん」


“脱出”だとか“追手”だとか“見張ってる”だとか。


気になることはいっぱいあるけど、きっと今聞いても答えてくれないんだろうな。


そう思い、口にしかけた質問をぐっと飲み込んだ。


だけど、これだけは聞くのを我慢できなくて。


「でも、ここからって、どうやって出るの?」


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