芦名くんの隠しごと
*
重いドアが開いた。入ってきたのは夏樹くんだった。
「よ、水上」
カウンター席からその姿を確認した私は、彼に向かって声をかける。
「夏樹くん、お疲れ様」
夏樹くんの通う南高校は、ときどき7時間授業があるらしい。
「あれ?今日、水上ひとりか?」
「うん。まだ藍ちゃん来なくて」
今日は芦名くんが送ってきてくれたけど、その芦名くんは用事があるらしく、すぐに行ってしまった。
寂しかったけど、私が引き留めるわけにもいかない。
もうすっかり夏になった7月上旬。
この空間も、毎日来ていたら大分慣れた。
「あー、アイツなら補習」
「え、なんで夏樹くんが知ってるの?」
「は?まさか水上、知らなかったのか?俺と藍、同じ学校だぞ」
「え……!?」
なにそれ、ぜんっぜん知らなかった。
藍ちゃんの学校、そういえば教えてもらってなかったからなあ……。
それに藍ちゃん、いつも私服だし。