芦名くんの隠しごと



“キライ”
その三文字が、重くのしかかった。


「………ンな表情(かお)すんなよ。別に本当に嫌いになるわけじゃねーから。今は、水上のこともちゃんと信用してるし、大事だよ。カンタンに切り捨てるかよ」


「……っ、夏樹くん………」


どこまでも優しい夏樹くんの言葉に、なんだか涙が出そうになる。


冷えきった心が、少しだか温まった気がした。


「ま、俺に言いづらいのは仕方ないにしても、藍には言ってやれよ」


「………夏樹くん、ひとつだけいいかな」


「どーした」


今、孝也さんがトイレ行っててよかった。今、芦名くんがいなくてよかった。


夏樹くんと二人きりだから、思い切って聞けたのだと思う。


「───花瀬伊織くんって、知ってる?」


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