芦名くんの隠しごと



*


「───花瀬くん」


覚悟を決めた次の日。


私は彼の名前を呼んだ。


今日は、迎えに来てくれる藍ちゃんに、“少し遅れる”と伝えておいた。


「………なに」


振り返り、あからさまに不機嫌な顔を見せる彼。


そりゃそうだ。


だって、今まで私の方が避けていたのだから。


「……聞きたいことが、あります」


いちばん聞きたいのは、芦名くんと花瀬くん──を軸にした関係性。


“関係ない”って言われても、今日は絶対、引き下がるつもりはない。


「………手短にして」


「……うん」


長々と聞くつもりはない。


もうクラスメイトたちは帰ったから、教室には私と花瀬くんの二人きり。


聞かれたくない話だって、きっとできる。


「───花瀬くんって、何者?」


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