芦名くんの隠しごと



使われていない裏門は、もはやただの穴が空いた壁もどきで。


もちろん穴が空いているところだって、わりと小柄な私でさえ、とても通れない。


だから、身長175センチはあるであろう芦名くんだって、通れるはずないのに。


「ああそのこと?ちょっと待っててね。見せるから」


そう言ったかと思うと、ヒュッと壁に足をかけて。


タンッ


「ふぅ…」


自分の身長の1.5倍くらいあるその門を、軽々と飛び越えてしまった。


…なんで。


運動があまりできない人の動きとは思えない。


というかむしろ、芦名くんって運動神経抜群なんじゃ……。


ポカンとしていたら、芦名くんが振り向いて笑った。


「…あ、びっくりした?」


そう聞かれ、思わず反射的にうなずく。


ウワサなんて聞いただけで、本当のことは知らないけど、あのウワサは私の勘違いなんじゃないかと思ってしまう。


すると彼は苦笑して言った。


「…俺が体育で手ぇ抜いてるの、俺と水上さんの秘密ね」


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