芦名くんの隠しごと



*



「……なあ、孝也さんって結局どういうポジションなわけ?」


「なに夏樹、急にどうしたの?」


「いや、水上がさ………なんでもねえ」


「そう?」


危ないところだった。


ついウッカリ、孝也さんにも話してしまうところだった。


孝也さんは“あのこと”は知らないのに。


意外な人(水上)から、懐かしい名前───伊織の名前を聞いた。


たぶん───忘れたかった名前。


アイツが今はどういう意識でいるのか、どういう立場でいるのか。


そのことを考えていたら、自然と目の前にいる孝也さんのことも知らねえな………と思った。


「本当にどうしたの?夏樹。俺に惚れた?」


“なんつって、そんなの応えられないけどな”なんて軽く茶化す孝也さんは、どこまでも読めない人で………正直苦手だ。


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