芦名くんの隠しごと
ずっと、女子といえば藍としか話してこなかった。
藍を除いた“こっち側”の女は、ただただ気持ち悪いだけだったから。
嫌いというわけではないが、醜い生き物なんだと、どこか諦めのようにそう思ってた。
……水上が現れるまでは。
「水上はすげえ奴だよ、ほんと」
「まーね」
「だからほんと、康生の気持ちにも早く気づけばいいのにな」
「………」
藍が、なんとも言えないような目でジーッと俺を見つめてくる。
「藍、どうし───」
プルルルルルル………
「……なんでもない。夏樹、出なよ。誰から?」
タイミングが良いのか悪いのか、誰かから電話がかかってきた。
ディスプレイを見ると、相手は楓。
───嫌な予感がした。