芦名くんの隠しごと
「物騒なこと言いますね、白楼の副総長さんは。それが冗談やハッタリじゃないから、余計に怖い」
クククッと、まったく怖がっていなさそうなサトルさんの態度が、余計に楓さんのイライラを上昇させたみたいだ。
「バカにするのもいい加減にしろよ。まずは、野乃ちゃんを返せ」
「そこにいますよ」
サトルさんが、クイッと、私と花瀬くんを顎で指した。
釣られてこっちに視線を向けた楓さんの目つきが、とたんに変わった。
「……伊織……………」
地を這うような低い声。
珍しく表情にも出ていることから、本気で怒っていることがわかる。
対照的に、花瀬くんは無表情で、なにを考えているのかわからない。