芦名くんの隠しごと



「なんでお前が、ここにいる」


「さあな。でも意外だったよ。生徒会長サマが、自らここに乗り込んでくるなんてさ」


小馬鹿にしたように花瀬くんが笑う。


なんでかは知らない。けれど、煽っていることは確実だった。それも───わざと。


あえて“生徒会長”と言った狙いは知らないけど、どこか飄々とした花瀬くんの表情には、微かに確信が宿っていた。


「………っ、お前、まさか」


「ご明察。俺と芦名と水上は、同じクラスだよ。所詮生徒会なんて雑用係。いくらお前が信頼されてようが、違う学年のクラス分けまではどうにもできねえってことだ」


『楓の前でその名前出すのはやめとけ。殺されるぞ。………俺でもな』


切なげに言っていた夏樹くんを思い出す。


普段ニコニコしている楓さんが、科学反応かと思うくらい、敵対心を滲ませていた。


あの夏樹くんの表現を、私は甘く見ていたのかもしれない。


タブーどころじゃない。


『 絶 対 禁 止 』


ふたりを交ぜたら、きっとどちらかが血を流すだけじゃ済まない。


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