芦名くんの隠しごと



「か、楓さん!」


「………野乃ちゃん」


突然、私が声をかけたため、少しだけ驚いたように私の方を見た楓さん。


「あの、来てくれてありがとうございます!縄、ほどいてもらえませんか?」


そこでようやく私が縛られてることに気付いたのか、ハッとしたように楓さんがかけ寄ってきてくれた。


「ごめん野乃ちゃん、来るのが遅れて」


「……でも、こうして来てくれて嬉しいです」


それに。


自惚れかもしれないけど、私のこと心配してきてくれたのだと思うと、嬉しくなる。


………さすがに、大切に思われてるとか、そういうのはないと思うけど。


「ほんと、救いようのないお人好しだよね、野乃ちゃんって」


「なっ、バカにしてるんですか……!?」


「でも、ま、無事でよかった」


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